水害では何階まで浸水する?賃貸の階数選びと垂直避難の判断基準を解説
災害・防災ハザードマップで候補物件に色がついていると分かったとき、多くの方が最初に思うのは「2階なら大丈夫なのだろうか」という素朴な疑問ではないでしょうか。1階は避けたほうがよさそうだけれど、では何階からなら現実的といえるのか。その基準はあまり語られていません。
本記事では、浸水深0.5m・3m・5mがそれぞれ建物の何階に相当するのかを示し、ハザードマップの数値から必要な階数を逆算する手順を解説します。あわせて、上階を選んでも生活が止まる理由や、垂直避難を選べる条件も取り上げますので、階数を決める材料としてぜひ参考にしてください。
水害では何階まで浸水する?浸水深と階数の対応
浸水深という数字は、メートルで示されても実感がわきにくいものです。そこで、建物のどのあたりまで水が来るのかに置き換えて考えると、階数の判断がしやすくなります。東京都建設局が示す目安をもとに、代表的な3つの深さを見ていきましょう。
以下の対応は、一般的な木造住宅や低層の集合住宅を想定したものです。建物の構造によってずれる点は、あとで補足します。
| 浸水深 | 建物のどこに当たるか | 起きること |
|---|---|---|
| 0.5m程度 | 地面から1階の床の高さ | 床上浸水が始まる |
| 3.0m程度 | 2階の床の下あたり | 1階が水没する |
| 5.0m程度 | 2階が水没する高さ | 3階以上へ上がるか、外へ避難するしかない |
0.5mは1階の床高、床下浸水と床上浸水の境目
0.5mは、家屋の1階床高に相当する深さです。地面から測ると大人の膝あたりまで水が来ている状態で、ここを超えると室内に水が入り、床上浸水になります。膝までなら歩けそうに見えますが、氾濫した水には流れがあるため、実際には歩行が難しくなる高さです。
国土交通省の川の防災情報でも、浸水深が膝の高さ以上になるとほとんどの人が避難困難になったと報告されています。1階の部屋を検討している場合、この0.5mが一つの分かれ目になると考えてください。
3.0mは2階の床下高、1階は水没する
3.0mになると、おおよそ家屋の2階床下高に届きます。1階は完全に水の中に入り、2階の床面ギリギリまで水位が上がる想定です。この段階では、1階に置いた家財も設備も使えなくなります。
2階の部屋であっても、玄関や階段は水につかっています。外に出られない状態が続くため、水が引くまでその場にとどまることが前提になるでしょう。
5.0mは2階が水没する高さ
5.0m程度は、家屋の2階が水没する深さです。2階建ての建物では逃げ場がなくなり、3階以上のある建物か、区域外への避難が現実的な選択になります。
ハザードマップで5.0m以上の色がついている地点は、階数の工夫だけでは対応しきれない領域だと理解しておきましょう。
同じ深さでも建物によって結果は変わる
ここまでの対応はあくまで目安です。実際には、建物の1階床が地面よりどれだけ高いか、階高が何メートルあるかによって結果が変わります。1階部分が駐車場になっているピロティ形式の建物では、居室の位置がもう一段高くなることもあります。
数値をそのまま当てはめるのではなく、その建物の造りとあわせて読むことが大切です。
(参考:国土交通省「川の防災情報|浸水深と避難行動について」)
ハザードマップから必要な階数を逆算する3つの手順
浸水深と階数の関係が分かれば、あとは候補物件の数値を当てはめるだけです。ここでは、地図を見てから部屋を絞り込むまでの流れを3つの手順に分けて見ていきます。
複雑な計算は必要ありません。地図の数値と建物の造りを突き合わせるだけで、必要な階数が分かります。
1. 物件の住所で想定最大規模の浸水深を確認する
まず、候補物件の住所で浸水深を調べます。自治体のハザードマップや国土交通省の重ねるハザードマップで、その地点に何メートルの想定が出ているかを読み取ってください。
このとき見るのは、想定最大規模のほうです。頻度は極めて小さい想定ですが、階数を決める場面では最悪の場合を起点にしておくと安心でしょう。
2. 浸水深に建物の階高を当てて必要な階数を出す
次に、読み取った浸水深を建物に当てはめます。一般的な集合住宅の階高は3m前後が目安なので、浸水深3.0mなら2階の床付近、5.0mなら3階の床付近まで水が届く計算になります。
- 浸水深0.5m未満なら、1階でも床上浸水は避けられる可能性がある
- 0.5m以上3.0m未満なら、2階以上が候補になる
- 3.0m以上5.0m未満なら、3階以上を軸に考える
- 5.0m以上なら、階数だけで解決せず避難前提で考える
3. 余裕を1階分とっておく
計算通りギリギリの階を選ぶと、想定を超える雨が降ったときに逃げ場がなくなるかもしれません。ハザードマップはあくまで一定の条件で計算した結果であり、実際の浸水がそれを上回る可能性は残ります。
そのため、必要と出た階数に1階分の余裕を足しておくと安心です。3階が必要なら4階を軸に探す、といった具合に考えてみてください。
1階や2階を選ぶ場合に確認しておきたいこと
家賃や利便性の関係で低層階を選ぶ判断もあります。その場合は、建物内に上階へ移動できる共用階段があるか、屋上に出られるか、近くに高い建物があるかといった逃げ道を先に確認しておきましょう。
内見を申し込むときに、共用部も見せてほしいと伝えておくと確認しやすくなります。
(参考:国土交通省「ハザードマップポータルサイト」)
上階なら安心とは限らない|生活が止まる3つの理由
ここまでの内容だけなら、上階を選べば解決するようにも見えるでしょう。ところが実際には、水が届かない高さの部屋でも生活が続けられなくなる事態が起こりえます。原因は部屋そのものではなく、建物の設備が浸水することにあります。
国土交通省と経済産業省がまとめた電気設備の浸水対策ガイドラインは、まさにこの問題を受けて作られました。理由を3つに分けて見ていきましょう。
受変電設備が浸水すると建物全体が停電する
集合住宅の電気は、受変電設備を通じて各住戸へ送られています。この設備が地下や1階に置かれている建物では、浸水によって設備が冠水し、建物全体が停電するおそれがあります。
令和元年東日本台風では、高層マンションの地下に設置された高圧受変電設備が冠水して停電が起き、ライフラインが一定期間使えなくなる被害が発生しました。これを受けて、令和2年6月に建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインが公表されています。
エレベーターが止まると上階ほど生活が難しくなる
停電すればエレベーターも止まってしまいます。このとき、上階を選んだことがかえって負担になるでしょう。階段で上り下りするしかなくなり、水や食料の運搬、ごみの搬出がすべて手作業になるためです。
小さなお子さんがいる家庭や、荷物の多い暮らしでは、この影響は小さくありません。何階まで浸水するかという問題と、何階なら暮らし続けられるかという問題は、別のものだと考えておきましょう。
給水ポンプの停止でトイレも使えなくなる
多くの集合住宅では、ポンプで水を各階へ送り上げています。停電でポンプが止まれば、上階ほど水が出なくなります。飲み水だけでなく、トイレを流すこともできなくなるため、在宅で耐えるという選択が難しくなるでしょう。
浸水した水が引くまでに数日かかる地域では、この状態が長引きます。浸水継続時間をあわせて確認しておきたいのは、こうした理由からです。
(参考:国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」)
垂直避難を選べる3つの条件
上階へ移動して水をやり過ごす行動は、避難情報のうえでは屋内安全確保と呼ばれます。内閣府の避難情報に関するガイドラインでは、この行動を選べる条件が明確に示されています。
自宅にとどまるという判断は、条件を満たしている場合に限って成り立つものです。順に確認しましょう。
1. 家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないこと
1つ目は、自宅が家屋倒壊等氾濫想定区域に含まれていないことです。この区域は堤防が決壊したときに激しい氾濫流や河岸の侵食が想定される範囲で、建物そのものが流されたり傾いたりする可能性があります。
上階に上がってもしのげない前提の区域なので、該当する場合は早い段階で区域外へ移動する行動が基本になります。
2. 浸水しない居室があること
2つ目は、浸水しない居室があることです。必要な階数を出す考え方が、ここでそのまま当てはまります。想定される浸水深より上に、生活できる部屋があるかどうかを確認してください。
なお、屋内安全確保が選べるのは洪水と高潮の場合に限られます。土砂災害では、建物にとどまる判断は原則として取れません。
3. 一定期間の孤立を許容できること
3つ目は、一定期間浸水することによる支障を許容できることです。ガイドラインでは、水や食料、薬の確保が困難になること、電気やガス、水道が使えなくなることが支障の例として挙げられています。
前章で見た停電や断水は、まさにこの支障そのものです。備蓄があるか、乳幼児や高齢の家族がいないかによって、許容できる範囲は変わってきます。
判断は警戒レベル4までに済ませておく
避難情報は5段階の警戒レベルで示されるものです。警戒レベル3が高齢者等避難、警戒レベル4が避難指示で、レベル4の段階で危険な場所から全員が避難することになっています。レベル5の緊急安全確保は、すでに災害が発生または切迫している状況です。
つまり、屋内にとどまるか外へ出るかは、レベル4までに決めておく必要があります。物件を決める段階でどちらを選ぶのかを想定しておくと、当日の迷いが減るでしょう。
(参考:内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」)
階数と家賃のバランスをどう取るか
階数を上げれば浸水のリスクは下がりますが、そのぶん家賃は上がるのが一般的です。予算には限りがあるため、どこかで折り合いをつける必要が出てきます。
最後に、階数と家賃のどちらをどこまで優先するかの考え方を見ていきましょう。
上がるのは家賃だけではないという前提を持つ
高い階を選ぶと、家賃に加えてエレベーター停止時の負担も増えます。一方、低い階は家賃を抑えられる代わりに、浸水の影響を直接受けやすい位置です。どちらにも一長一短があると考えておくと、必要以上に階数だけを追わずに済みます。
浸水深が0.5m未満の地点であれば、低層階を選んでも大きな不利にはなりません。まずは候補地の数値を確認するところからです。
階数以外で下げられるリスクもある
階数は選択肢の一つにすぎません。受変電設備が上階や屋上に設置されている建物を選ぶ、上階へ上がれる共用階段がある建物を選ぶ、水や食料を数日分備えておくといった対策も、同じ方向に働きます。
家賃を上げずにできることから手をつけると、選べる物件の幅が広がります。
階数と家賃を一緒に検討する
ここまでの判断を、物件情報だけで組み立てるのは簡単ではありません。ハザードマップの数値、建物の造り、設備の位置、そして家賃を候補ごとに突き合わせる作業には、どうしても手間がかかります。
ゼンは、横浜市で不動産賃貸事業を営む会社です。神奈川県宅地建物取引業協会に加盟し、物件のご提案から賃貸契約、ご入居までをサポートしています。何階を軸に探すか、その階数で家賃が予算に収まるかで迷ったときは、物件を絞り込む前の段階からお気軽にお尋ねください。
【まとめ】階数は浸水深から逆算し、上階のリスクまで見て決める
水害で何階まで浸水するかは、浸水深から逆算できます。0.5mは1階の床高、3.0mは2階の床下高、5.0mは2階が水没する高さが目安です。候補物件の想定最大規模の浸水深を確認し、階高を当てて必要な階数を出し、そこに1階分の余裕を足すという流れで考えてみてください。
ただし、上階なら万全というわけではありません。受変電設備の浸水による停電、エレベーターの停止、給水ポンプの停止は、上階ほど生活を難しくします。屋内にとどまる判断も、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないこと、浸水しない居室があること、一定期間の孤立を許容できることという3つの条件がそろってはじめて選べるものです。
ゼンは、こだわりの条件から住まいを探すお客様と向き合ってきた賃貸仲介会社です。階数と家賃のバランスに迷ったというご相談にも、物件を絞り込む段階からお付き合いします。何階なら現実的なのか判断がつかない方は、ぜひ一度ゼンにご相談ください。

