無料で相談する

賃貸の災害リスクはどこまで調べる?契約前に確認すべきチェックリスト

災害・防災

賃貸物件を探していると、「防災が大事なのは分かっているけれど、ハザードマップを開いても色の意味が分からず、結局は家賃と駅までの距離で決めてしまった」という状態になりがちです。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

後回しにしてしまうのは、防災意識が低いからではありません。確認すべき範囲と順番が整理されていないため、どこで手を止めてよいか判断できないだけです。

範囲さえ決まれば、作業そのものは1物件あたり10〜15分ほどで終わります。この記事では、賃貸の災害リスクを立地・建物・契約の3方向に整理し、ハザードマップの見方を4ステップで解説します。さらに、契約前に不動産会社へ聞いてよい質問と、そのまま使える12項目のチェックリストもご用意しました。

賃貸の災害リスクは「立地・建物・契約」の3方向で確認できる

災害リスクと聞くと、調べることが際限なくあるように感じるかもしれません。しかし実際に確認する対象は、土地・建物・契約の中身という3つに集約されます。この全体像を先に押さえておけば、途中で何を調べているのか分かなくなる事態を防げるでしょう。まずは、多くの人がどこでつまずいているのかを確認したうえで、3方向の中身と取りかかるタイミングを整理していきます。

防災の必要性は感じていても、約4割は調べないまま部屋を決めている

部屋探しをした人の多くが防災の必要性を認識している一方で、ハザードマップを見たことがない、あるいは見たかどうか覚えていない人は約4割にのぼるという調査結果があります。

つまり、災害リスクの確認を後回しにしているのはあなただけではありません。多くの人が同じ場所で止まっています。

確認しなかった理由として最も多く挙がったのは「確認するのが面倒」でした。背景にあるのは、情報が各所に分散しているという構造的な問題です。国のサイト、自治体のサイト、重要事項説明書と、見るべきものがばらばらに存在しています。

そのため「どこから手をつけるか」の判断自体に労力がかかり、行動に移す前に力尽きてしまうわけです。逆にいえば、見る順番さえ決まれば作業は難しくありません。

確認する範囲は3方向に分けると迷わない

賃貸の災害リスクは、次の3つの方向に切り分けると整理しやすくなります。

確認軸 主な確認内容 確認する手段
立地 水害・土砂災害・地震・液状化のリスク、避難場所 ハザードマップポータルサイト、自治体・都県のサイト
建物 築年数(耐震基準)、構造、階数、設備の位置 募集図面、物件詳細情報、内見
契約 重要事項説明、保険の補償範囲、被災時の費用負担 不動産会社へのヒアリング

立地は自分で調べられる部分、建物は資料と内見で見る部分、契約は不動産会社に聞く部分と、役割がはっきり分かれます。

どれが欠けても判断材料としては不十分です。たとえば立地だけを確認して契約すると、被災したときの費用負担を知らないまま入居することになりかねません。3方向がそろって、ようやく納得して契約できる状態になります。

調べるタイミングは「内見前から申し込み前まで」が目安

災害リスクを調べるのは、候補物件を絞り込む段階が最適です。契約直前や申し込み後に気になる事実を知ると、引き返しにくい心理状態になってしまうためです。

具体的な流れとしては、内見に行く物件を決める前にハザードマップで立地を確認し、内見当日に建物と周辺を見て、申し込み前に不動産会社へ質問するという順番になります。

所要時間の目安は1物件あたり10〜15分程度です。住所を入力して地図を見るだけなら5分もかかりません。「まとまった時間が取れたら調べよう」と考えると着手が遅れるため、気になる物件を見つけたその場で確認してしまうほうが結果的に楽でしょう。

すべてを完璧に調べる必要はありません。まずは1物件、試しに開いてみてください。

賃貸で確認したい災害リスクは4種類|水害・土砂災害・地震・液状化

記事のイメージ画像

災害リスクとひとくちにいっても、起こる仕組みも調べ方も種類ごとに違います。賃貸の部屋探しで押さえておきたいのは、水害・土砂災害・地震・液状化の4種類です。すべての物件で4つすべてが問題になるわけではありません。どれが自分の候補地に関係するのかを知っておけば、調べる範囲を必要なところに絞れます。ここでは種類ごとの特徴と、賃貸ならではの見るべきポイントを解説します。

水害|川の氾濫と、街なかで起こる内水氾濫

水害には大きく2つの種類があります。ひとつは川の水があふれる氾濫、もうひとつは雨水が下水道や側溝から流れきれずにあふれる内水氾濫です。

川から離れているから安心とは限らない理由が、この内水氾濫にあります。市街地は地面の多くが舗装されているため、雨水が地中にしみ込まず、一気に下水道へ流れ込みます。処理できる量を超えると、水は行き場を失って道路や建物へあふれ出てしまうのです。

賃貸の部屋探しで見るべきなのは、想定される浸水の深さです。深さによって生活への影響がまったく変わります。

浸水の深さ 想定される状況の目安
0.5m未満 床下浸水の程度。大人のひざ下ほど
0.5〜3.0m 1階の軒下まで浸水するおそれがある
3.0〜5.0m 2階の軒下まで浸水するおそれがある
5.0m以上 3階まで浸水が及ぶおそれがある

「3.0m」と表示されていれば、2階に住んでいても浸水を免れない可能性があると読み取れます。

土砂災害|警戒区域と特別警戒区域では意味が違う

土砂災害については、都道府県知事が指定する区域が2種類あります。名前は似ていますが、意味する危険の度合いは異なります。

土砂災害警戒区域(通称イエローゾーン)は、土砂災害が起きたときに住民の生命や身体に危害が生じるおそれがある区域です。避難体制を整えることを目的に指定されています。

一方の土砂災害特別警戒区域(通称レッドゾーン)は、警戒区域のうち建物が壊れて著しい危害が生じるおそれがある区域を指します。こちらは開発行為の制限や建築物の構造規制がかかるため、より強い注意が必要な場所だと理解しておきましょう。

山沿いだけの話ではありません。住宅街でも、擁壁や斜面の近くに建つ物件では敷地と区域の位置関係を確認してください。なお、土砂災害警戒区域内にあることは重要事項説明の対象で、不動産会社から説明される事項に含まれています。

地震|同じ地域でも土地によって揺れやすさは変わる

地震の揺れ方は、同じ市区町村のなかでも場所によって差が出ます。理由は地盤の違いにあります。

やわらかい地盤の上では地震の波が増幅されやすく、かたい地盤の上より大きく揺れる傾向があるためです。かつて田んぼや池だった土地、川沿いの低地などは、周辺の台地より揺れやすいといわれています。

東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県では、それぞれ地域ごとの危険度を調査して公開しています。たとえば東京都は、令和4年9月に公表した「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」で、市街化区域の5,192町丁目を対象に建物倒壊危険度と火災危険度などを5段階で相対評価しました。

町丁目という細かい単位で見られるため、候補物件の住所が分かれば自分で調べられます。専門用語を覚える必要はなく、該当地域のランクを一度確認しておくだけでも判断材料になるでしょう。

(参考:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査」)

液状化|埋立地や昔の川沿いで起きやすい

液状化とは、強い揺れによって地盤が一時的に液体のような状態になる現象です。砂が多く地下水位の高い土地で起こりやすく、湾岸の埋立地や昔の川の跡地などが該当します。

賃貸で見落とされやすいのは、建物が無事でも生活が止まるという点でしょう。地面が沈んだり傾いたりすると、水道管や下水道管が壊れ、道路にも段差が生じます。その結果、水が出ない、トイレが使えない、車が通れないという状態が長引くおそれがあるのです。

液状化のリスクは全国共通の地図として整備しきれていない部分があり、自治体や都県が独自に公開している予測図を見る必要があります。「◯◯市液状化マップ」のように検索すれば見つかることが多いので、候補地が埋立地や低地にあたる場合は確認しておきましょう。

▼災害リスク4種類の比較一覧

災害の種類 主な発生場所 確認すべきポイント 賃貸選びでの判断基準
水害 川沿い、低地、市街地全般 想定される浸水の深さ 浸水の深さより高い階を選べるか
土砂災害 斜面の近く、擁壁の周辺 警戒区域・特別警戒区域の指定 敷地が区域にかかっていないか
地震 やわらかい地盤、昔の川沿い 建物倒壊・火災の危険度ランク 構造と耐震基準をあわせて見る
液状化 埋立地、沿岸部、昔の川の跡地 自治体の予測図での区分 断水や道路の寸断への備え

賃貸の災害リスクの調べ方4ステップ|ハザードマップの見方をやさしく解説

ハザードマップは専門家向けの資料ではなく、住所を入力するだけで使えるように作られています。ここでは国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」を使い、4つのステップで確認する方法を紹介します。操作はスマートフォンでも完結するので、内見の帰り道や通勤中でも進められるでしょう。最後に、地図だけでは読み取れない部分をどう補うかについても触れます。

ステップ1|「重ねるハザードマップ」に物件の住所を入力する

まずは「ハザードマップポータルサイト」にアクセスしてください。トップページには「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」という2つの入口が並んでいます。

最初に使うのは前者です。重ねるハザードマップは、国や都道府県が持つ災害リスクの情報を1枚の地図に重ねて表示できる仕組みになっています。

検索欄に候補物件の住所を入力すると、その地点を中心とした地図が開きます。番地まで分からない場合は、町名までの入力でも周辺の傾向はつかめるでしょう。スマートフォンからは「現在地から探す」も選べるため、内見先の玄関前でその場のリスクを確認するという使い方もできます。

パソコンを開く必要はありません。物件情報を見た流れで、そのまま確認してしまうのがおすすめです。

(参考:国土交通省「ハザードマップポータルサイト」)

ステップ2|災害の種類を重ねて表示する

地図が開いたら、表示する災害の種類を選びます。重ねるハザードマップで確認できるのは、洪水・内水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報に加えて、道路防災情報や土地の成り立ちなどです。

便利なのは、複数の情報を同時に重ねられる点でしょう。洪水だけを見て安心すると、土砂災害の区域に入っていることを見落としするおそれがあります。1種類ずつ切り替えるのではなく、関係しそうな種類をまとめて表示させてください。

「土地の特徴・成り立ち」という項目もぜひ開いてみましょう。その土地がもともと台地だったのか、川沿いの低地だったのかといった分類が確認でき、昔から水が集まりやすい場所かどうかを知る手がかりになります。

なお、2026年7月からは地理院地図に掲載されている指定避難所も表示できるようになりました。地震の揺れやすさと液状化については、このサイトには含まれないため、次のステップ4で自治体や都県の資料を見ます。

ステップ3|色と数字から浸水の深さを読み取る

地図に色がついていると、それだけで候補から外したくなるかもしれません。しかし色は「住めない」という意味ではなく、想定される浸水の深さを段階で示しているだけです。

見るべきなのは色そのものではなく、凡例に書かれた数字になります。同じ「色がついている」でも、0.5m未満と5.0m以上ではまったく意味が違うためです。

読み取った深さは、検討している部屋の階数と組み合わせて判断しましょう。たとえば想定が0.5m未満なら、2階以上の部屋であれば居住空間への浸水は考えにくくなります。一方で3.0mの想定なら、2階でも浸水のおそれがあると考えておくべきです。

また、洪水のハザードマップは「想定しうる最大規模の降雨」を前提に作られている場合があります。毎年起こる事態ではない点も、あわせて押さえておいてください。

ステップ4|自治体のハザードマップで避難場所と道のりを確かめる

国のサイトで全体像をつかんだら、次は自治体版を見ます。ポータルサイト内の「わがまちハザードマップ」から、市区町村が公開している地図へ移動できます。

2つのサイトは役割が違います。重ねるハザードマップが全国を同じ基準で見渡せるのに対し、自治体版は避難場所の位置や地域特有の注意点など、生活に近い情報に強いという特徴があるためです。地震の揺れやすさや液状化の予測も、多くは自治体や都県の資料で公開されています。

確認したいのは避難場所までの距離だけではありません。そこまでの道のりに川や水路、急な坂、狭い路地がないかも見ておきましょう。

妊娠中の方や小さなお子さんがいる家庭では、この視点が特に重要になります。距離が近くても、途中に階段や冠水しやすい道があれば、避難の負担は大きく変わってしまうためです。

4ステップで終わらせない|色がついていない場所でも浸水は起こる

ここまでで立地の把握は進みますが、地図が白い=絶対に浸水しない、という意味ではありません。近年の豪雨では、浸水想定区域の外で被害が発生した事例も報告されています。

理由のひとつが、前述した内水氾濫です。川の氾濫を前提に作られた地図では、排水が追いつかずに起こる浸水まではカバーしきれない場合があります。

そこで役立つのが、現地で見える情報です。次のようなサインは自分の目で確認できます。

  • 周りの土地より低くなっている
  • 近くに坂があり、その下に位置している
  • 側溝や排水溝にごみや落ち葉が詰まっている
  • 道路のアスファルトに土砂が流れた跡がある
  • 建物の基礎や塀に、水位の跡のような変色がある

内見の際に周囲を一周するだけでも、地図からは読み取れない情報が得られます。

築年数と構造でわかる建物の災害リスク|確認したい4つのポイント

立地の確認が終わったら、次は建物そのものに目を向けます。同じ場所に建っていても、建物の年代や構造によって災害時の状況は変わるためです。とはいえ専門的な知識は必要ありません。物件資料に書かれている築年月と構造、そして内見で見える範囲を押さえれば、判断材料としては十分です。ここでは確認したい4つのポイントを順に解説します。

築年数は「1981年6月」と「2000年6月」が分かれ目

建物の耐震性を考えるうえで、大きな区切りとなる年が2つあります。

ひとつめが1981年6月1日です。この日以降に建築確認を受けた建物には、いわゆる新耐震基準が適用されています。旧基準が震度5強程度で倒壊しないことを目標としていたのに対し、新基準では震度6強から7程度の揺れでも倒壊しないことが求められるようになりました。

ふたつめが2000年6月1日で、木造住宅の規定が強化された時期です。地盤調査、耐力壁のバランスの取れた配置、接合部の金物などが細かく定められ、2000年基準と呼ばれています。

注意したいのは、判断の基準が完成した日ではなく建築確認を受けた日だという点です。物件資料の築年月が1981年10月でも、建築確認が同年4月であれば旧基準で設計されています。1981年前後や2000年前後の物件では、不動産会社に建築確認日を調べてもらうと確実でしょう。

木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造で変わる揺れと火災への強さ

構造の違いは、災害時の建物の状況に影響します。ただし「この構造なら安全」と言い切れるものではなく、それぞれに得意と不得意がある点を前提にしてください。

構造 地震の揺れへの特徴 火災への強さ 水害後の復旧
木造 建物が軽く揺れやすい。2000年基準以降は規定が強化されている 燃え広がりやすい面がある 木材の乾燥や消毒に時間がかかる
鉄骨造(S造) しなって揺れを逃がす 木造より強いが高熱に弱い 床材や内装の張り替えが必要
鉄筋コンクリート造(RC造) 建物全体が固く、揺れは伝わりにくい 比較的強い 構造部分は損傷しにくい

同じ木造でも、建てられた年代によって性能は大きく異なります。構造だけで判断せず、前項の築年数とあわせて見ることが大切です。

延焼のリスクは、隣の建物との距離や周辺の密集具合にも左右されます。構造の話は建物単体で完結しないと覚えておきましょう。

階数の選び方|低い階は浸水、高い階は停電と揺れ

「上の階なら安心」と考えてしまいがちですが、階数の選択には両面があります。

低い階のリスクは浸水です。ハザードマップで確認した想定の深さが3.0mであれば、2階でも居住空間まで水が入る可能性があります。1階を選ぶ場合は、道路面から玄関までの高さも見ておきたいところです。

一方、高い階にも別のリスクがあります。受水槽のポンプや電気設備が1階や地下に置かれている建物では、そこが浸水すると建物全体で停電や断水が起こりえます。エレベーターが止まれば、階段での上り下りが続くことになるでしょう。

地震の揺れも、一般に上の階ほど大きく感じられます。家具の固定がより重要になる点は意識しておいてください。

どちらが正解ということではありません。想定される浸水の深さと自分の生活スタイルを照らし合わせて選ぶのが現実的です。

内見のときに5分で確認できる5か所

内見は部屋の広さや設備を見る場だと思われがちですが、立地の安全性を自分の目で確かめる機会でもあります。次の5か所は、5分あれば確認できます。

  • 擁壁やブロック塀の状態(ひび割れや膨らみ、水がしみ出た跡がないか)
  • 敷地と前面道路の高低差(道路より敷地が低くなっていないか)
  • 1階の給湯器や電気設備の位置(地面から離してかさ上げされているか)
  • 側溝や排水溝の詰まり(落ち葉やごみがたまっていないか)
  • 周辺の土地の高さ(周囲が坂になっていて水が集まりやすくないか)

気になる点があれば、その場で担当者に聞いてみましょう。過去の浸水の記録や、建物の管理状況について補足を得られる場合があります。

写真を撮っておくと、複数の物件を比べるときに役立ちます。

契約前に不動産会社へ聞いてよい7つの質問|説明義務の範囲も知っておく

記事のイメージ画像

災害リスクについて質問すると、神経質な客だと思われないか気になる方もいるでしょう。しかし水害や土砂災害に関する説明は、法律で不動産会社に義務づけられた事項です。聞きにくいことではなく、本来説明されるべきことだと認識を切り替えてみてください。ここでは制度の中身を確認したうえで、申し込み前に使える具体的な質問と、回答が曖昧だったときの考え方を紹介します。

水害ハザードマップの説明は2020年8月から義務になっている

2020年8月28日に宅地建物取引業法の施行規則が改正され、重要事項説明の項目に水害リスクが加わりました。具体的には、水防法にもとづく水害ハザードマップ上で、取引の対象となる物件がどこに位置するかを説明することが義務づけられています。

対象は洪水・内水・高潮の3種類で、売買だけでなく賃貸の契約にも適用されます。説明の方法としては、重要事項説明書にハザードマップを添付し、物件の位置を示しながら伝えるという形が一般的です。

なお、市町村が水害ハザードマップを作成していない場合は、その旨を説明すれば義務を果たしたことになります。土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域に該当する場合も、同じく重要事項説明の対象です。

つまりこれらは、頼めば教えてもらえるものではなく、契約前に必ず説明される内容だといえます。

(参考:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部改正(水害リスク情報の重要事項説明への追加)に関するQ&A」)

申し込みの前に聞いておきたい質問7例

重要事項説明が行われるのは、多くの場合で申し込みの後です。しかし説明を待たずに、内見や相談の段階で聞いてしまってかまいません。そのまま使える聞き方を7つ挙げます。

  • 「ハザードマップ上で、この物件はどの位置に該当しますか?」
  • 「過去にこの建物や周辺で、浸水や冠水の被害が出た記録はありますか?」
  • 「この建物の建築確認は、いつ受けたものでしょうか?」
  • 「万が一のとき、最寄りの避難場所はどこになりますか?」
  • 「夜間や休日に設備のトラブルが起きた場合、連絡先はどこになりますか?」
  • 「加入する火災保険では、水災や家財の補償範囲はどうなっていますか?」
  • 「災害で建物や設備が壊れた場合、費用の負担はどう分かれますか?」

メールやチャットで送るなら、「契約前に確認しておきたい点がいくつかあります」と前置きし、番号をつけて並べると回答が整理されて返ってきやすくなります。

すべてに即答が得られなくても問題ありません。調べて回答してもらえるかどうかが、判断材料のひとつになります。

被災したときの費用は誰が払うのかを契約前に確かめる

見落とされやすいのが、被災した後の費用負担です。ここを知らないまま契約すると、いざというときに想定外の出費が生じかねません。

基本的な考え方として、建物そのものの修繕は貸主が負う義務とされています。民法でも、賃貸人は賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負うと定められています。一方、家具や家電といった家財の損害、入居者自身のけがについては、原則として入居者側の備えでまかなうことになります。

そこで関係してくるのが保険です。賃貸契約では火災保険への加入を求められるのが一般的で、家財の補償と借家人賠償責任の補償がセットになっている商品が多くあります。地震による損害は火災保険だけでは対象にならず、地震保険をあわせて契約する必要があります。賃貸入居者の地震保険は、家財が対象です。

さらに、大規模な災害では被災者生活再建支援制度などの公的支援も用意されています。保険と公的支援の両方があると知っておくだけでも、不安の質は変わるでしょう。

(参考:e-Gov法令検索「民法」/内閣府「被災者生活再建支援制度」)

答えが曖昧だったときの受け止め方

質問に対して明確な回答が返ってこないこともあります。そのとき、すぐに不誠実だと決めつける必要はありません。担当者が水害の専門家ではない以上、その場で答えられない内容もあるためです。

実際、ハザードマップの記載内容について詳しい説明を求められた場合は、作成した自治体へ問い合わせるよう案内するのが適切とされています。「自治体に確認します」という回答は、むしろ誠実な対応だといえるでしょう。

判断材料になるのは、回答の内容そのものより姿勢のほうです。調べて折り返す意思があるか、説明義務のある事項を契約直前まで出し渋らないか、といった点に注目してみてください。

納得できないまま話が進みそうなときは、自分でハザードマップを調べ直す、別の会社にも相談してみるという選択肢があります。契約を急ぐ必要はありません。

契約前に使える賃貸の災害リスクチェックリスト12項目

ここまでの内容を、実際の部屋探しで使える形にまとめます。立地・建物・契約の3方向に沿って全12項目を並べました。すべてを完璧に埋める必要はなく、埋まらなかった項目が「まだ判断材料が足りない部分」だと思ってください。スマートフォンにメモしておけば、内見先でもそのまま使えます。

立地について確認する5項目

まずは自分で調べられる範囲です。ハザードマップを開けば、5項目のうち4つはその場で確認できます。

  • 洪水・内水・土砂災害・高潮の情報をハザードマップで確認した
  • 想定される浸水の深さを数字で把握した
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域に該当するか確認した
  • 避難場所の位置と、そこまでの距離を調べた
  • 避難経路に川や急な坂、狭い路地がないか地図で確かめた

この5項目が埋まると、その土地でどんな災害に備えるべきかがはっきりします。候補が複数ある場合は、同じ項目で比べてみると違いが見えてくるでしょう。

地震の揺れやすさと液状化の予測は、都道府県や自治体のサイトで補ってください。埋立地や川沿いの低地を検討している方は、特に確認しておくと判断の精度が上がります。

建物について確認する4項目

続いて建物です。物件資料と内見で確認できる項目になります。

  • 建築確認を受けた時期が1981年6月以降か確認した(木造は2000年6月以降かも)
  • 構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造)を把握した
  • 検討している階数と、想定される浸水の深さを照らし合わせた
  • 擁壁の状態と、1階の給湯器や電気設備の位置を内見で確認した

築年月しか記載のない物件では、建築確認日まではわかりません。1981年前後や2000年前後の物件なら、不動産会社に調べてもらいましょう。

階数については、浸水だけでなく停電時の生活も想像してみることをおすすめします。エレベーターが止まった状態で毎日上り下りできるかどうかは、選ぶ階を決める現実的な判断材料になります。

契約内容について確認する3項目

最後は契約に関する項目です。不動産会社への質問を通して確認します。

  • 重要事項説明で、水害ハザードマップ上の位置について説明を受けた
  • 加入する保険の補償範囲(家財・借家人賠償・地震保険)を把握した
  • 被災したときの修繕費の分担について説明を受けた

この3項目は、申し込みの前に聞いても失礼にはあたりません。説明義務のある事項が含まれているためです。

特に保険は、勧められるまま加入すると内容を把握しないまま契約することになりがちです。何が補償され、何が補償されないのかを一度整理しておくと、入居後の安心感が変わってきます。

自分で調べきれないと感じたときは不動産会社に相談する

12項目を見て「ここまでは手が回らない」と感じた方もいるかもしれません。そのときは、地域を知る不動産会社に相談するという方法があります。

ゼン株式会社では、物件のご紹介だけでなく、契約前の段階で地域の安全性に関するご相談にも対応しています。ハザードマップの見方が分からないという段階からでも問題ありません。「この地図の、ここがご検討中の物件です」と一緒に確認するところから始められます。

当社は神奈川県宅地建物取引業協会に加盟しており、リスクマネジメントに関する体制も公式サイトで公開しています。判断に必要な情報を早めにお伝えすることを大切にしています。

気になる物件はあるけれど安全面が判断できない、何から確認すればよいか分からない。そのような状態でも、お気軽にお問い合わせください。

(参考:ゼン株式会社「会社概要」/「リスクマネジメント体制」)

まとめ:賃貸の災害リスクは4種類と4ステップで確認できる

賃貸の災害リスクは、立地・建物・契約という3方向で整理すれば、調べる範囲が限られていることが分かります。災害の種類は水害・土砂災害・地震・液状化の4つ、調べ方はハザードマップの4ステップです。

ハザードマップは万能ではありません。想定を超える雨が降れば、色のついていない場所でも浸水は起こりえます。それでも、判断の出発点としては十分に役立つ資料です。地図で全体の傾向をつかみ、内見で自分の目を使い、足りない部分を質問で埋める。この3つを組み合わせれば、必要な判断材料はそろいます。

完璧に調べ終えてから動き出す必要はありません。気になる物件を見つけたら、まずは住所を入力して地図を開いてみてください。その5分が、住み始めてからの安心につながります。

キーワードから記事を探すkeyword

キーワード